2012年 04月 23日
女たちとの旅からしばらくたった、ある朝、ふとケータイが鳴った。
知らない番号だ。また間違い電話だなこりゃ。 …と思ったら、ヒンディ語学校初級クラス時代の同級生だった。 「ご無沙汰してます、今デリーなんです〜」 ホントに続く時は続くものですね。女友達の来印、うれしい三連発。 まあ彼女はインド関連の研究者で、半年に一度のペースでやって来るのだけれど。 それじゃぜひ食事でも、ということで近所のモールで待ち合わせ。 『デリーにおけるアホアホぼんやり留学生の絶滅危機について』など、その末裔同士、貴重な意見交換を行う。 (あ、でも彼女は本当は優秀な人です。とっても…) 「あの頃はお金なくて、持ち物もなくて、時間だけはたっぷりあって」 「ダンボールひっくり返したテーブルで、普通にご飯食べてました」 「でも楽しかったですよねぇ」 と、彼女が言った。 「えーホント?」でも「おもしろそうね」でもなくて、「うん、楽しかったよねぇ」 と、実感を持って応えられることがなんだか嬉しかった。 ああ、この人とも小さいけれど、共有フォルダを持っているんだなわたし。 ほんの数カ月分だけれど、いろんな出来事の断片がその中には収まっている。 普段はそれを覗く時間も余裕も、そうそうない。 だから整理整頓もしてないし、切り抜きもいい加減だし、抜けてる内容も沢山あるに違いない。 でも色褪せてカビ臭くなってても、その中身はやっぱり大切なものなんだと、こうやってそれをふと一緒に取り出す瞬間に思う。 そして次の機会まで、またちゃんと保管しておこうと。 さてさて、彼女らとの旅も、忘れないようにそんな小さなフォルダに入れておこう。 なかなか整理できない、細かな切り抜きもその中に全部。 共有フォルダ『かの旅』 File: Fatehpur Sikri とダイバー M嬢たちとのアーグラー日帰りツアー、帰りの列車までの時間をつぶすために行った、これまた世界遺産。 アーグラーから片道1時間半くらいかかるので、タージ・マハルとアーグラー城だけ見てスルーされてしまうことが多いみたいだけれど、はっきり言って見る価値すごくアリだった。 皇帝アクバルによって作られた、それは立派なファテープル・スィークリー。 でも、同じ世界遺産なのにタージ・マハルと比べて観光客少ないし、周辺ゴミだらけで、見事な遺跡なだけにそれはとても残念。 素晴らしいとこなので、みんなもっと行くようになったらいいのになあ。 皇帝が中庭で楽しんだという「人間チェス」やら、後宮に控える「日替わり愛人」やらの話をガイドさんから聞いて、 「金持ちの考えることは、ようわからんねぇ」 という、とても現実的かつ女性的な意見に落ち着いた我々でありました。 せっかくこんな凄いお城を建てて遷都したのに、水不足のためたった十数年で使われなくなった都。 水不足はホント辛いもんね、今も昔も同じだよね(しみじみ)。 「これが普段使う水を貯めておいた、巨大な貯水槽です」とガイドさん。 さすが皇帝だわ、こんな大きいタンクうちにも欲しい、と写真を撮る。 と、その貯水槽のわきに、くつろいでいる男が一人。世界遺産で何してるんですか、おじさん。 (上の写真に小さく映ってます) ガ:「で、あそこにいる人ね。あの人、言えば飛込みますけど、どうしますか?」 私:「はい?」 ガ:「あの人ね、飛込みます。でもお金取りますけど、どうしますか?」 私:「…やめときます」 男:「おーい!どうするってー!?」 ガ:「いらないってさー!」 ほんと逞しい…。いろんな職種があるけど、この手のプロのダイバーには初めて会った。 もしや皇帝アクバルの時代にも、飛込みおじさんはいたのだろうか…。 File:Eat, Pray and Buy 昔はこんなふうじゃなかったらしい、ガートでのお祈り儀式 in Varanasi。 温泉街でなにかのショーを見てるような気分に、なるようなならないような。 ガートの段々に座ってぼんやり見ていたら、暴れ牛乱入。おぉ、蹴られなくて良かった…。 なかなかぼんやりとさせてくれない、油断禁物な街バラナシ。 「バラナシではインド料理は絶対に食べないぞ!だって旅行なんだもん(意味不明)!」 とわたしが高らかに宣言したために、夕食はラーメン。 Qちゃんは文句も言わず、静かに天ぷらうどんを食べていた。 どっちも、ちゃんとしたラーメンとうどんのお味で満足でした。 ついでにバラナシのラッシーは美味しいと評判らしいけど、ホントに濃くて美味しかったです。 飲み物というより食べ物みたいな濃厚さ。 唯一のバラナシ土産。 こけし。 ではなく、マトリョーシカ。 黙ってリビングに飾ってあるけれど、相方完全ノーコメントであります。ふっ。 File: IBUKURO 今回、数年ぶりで日本のインド旅行ガイド本というのを手にしたのだった。 こっちに住んでると、単純に入手できないから読まない。 で当然、イマドキ観光情報にはものすごい疎い人になってしまうわけですね。 案内したいのは山々なんだけど、ガイドブック読んでる彼女らの方が詳しかったりする…。 「ここに行きたい!」というM嬢の希望だった、某デザイナーズレストラン(?)の品。 内装がおしゃれなドラキュラ屋敷みたいで、楽しかった。 お味はあんまり辛くなくてよろしい。 正直、この国で「食べる」ことって、旅行者にとっては結構大変な事なんだなーと思った。 よっぽど『辛いのも油っぽいのも大好きです、どんと来い!』という人でないかぎり、なんでもポイポイ口に入れるわけにはいかない。 どんなにマイルドなものを選んでも、日本人の可憐な舌と胃袋にはそこそこの刺激になる。 かと言って、せっかく来てるんだから色々本場の味だって試してみたいもんねえ。 朝食は大概、ホテルや宿で済ませることになるけど、インド風メニューは朝からなかなか喉を通らない。 果物って大丈夫?卵は?乳製品は? ちゃんとした宿なら神経質にならなくてもいいけれど、胃もたれしてるから念のためと控えると、結局パンとコーヒーだけ…みたいな事になってしまう。 食べ過ぎは良くないけれど、食べられないのも問題なのだった。 だって旅行というのは、けっこうな体力を消耗するんだよね。 そして清く正しいツーリストは、その日のタスクをこなそうと頑張るものなのだ。 その疲れた身体と胃袋が求めるような、優しく爽やかな食べ物にはそう簡単に出会えない。 出会えたとしても、そういうものばかりではスタミナ不足なので、胃袋の方を「おりゃ!」と食べ物の方に合わせなければいけないことも多いのだ。 デリーを丸一日ひとりで探検したQちゃんは、急に上昇した気温に加え、それまでの疲れと食欲不振で、ついに最終日は病床に伏せってしまった。 「マンホールは信用するな」とか「犬と猿には関わるな」とか、一人歩きの注意事項を色々言ったつもりでいたけれど、一番肝心なことを言い忘れていた。 「疲れたら頑張らずに、ダラダラ休むべし」 なんとか飛行機に乗り込み帰国したQちゃんは、すぐにその足で点滴を受けに行き、復活までには数日間かかったらしい。 それなのに復活後に初めてキッチンで作った料理は、『カレーライス』だったというオチ…。 「あんなに食べられなくて苦しんだのに、カレー。やっぱり全然別物!」by Qちゃん ちなみにM嬢と同行したN嬢は、帰ってすぐにコンビニでオニギリ買って頬張ったそうであります。 みなさま、本当にお疲れ様でした…。 インドに代わって、わたしが肩でも脚でも揉んで差し上げたい。 で、インドどうだった? 「あと3日くらい居たかった。1週間は厳しいけど!」 by M嬢 「また20年後に」 by Qちゃん と、なかなか微妙なインドとの関係が、浮き彫りに。 それでもこの厄介な地に、思い切って来てくれてどうもありがとう。 沢山お土産や差し入れを持ってきてくれて、ありがとう。 わたしを久々に旅人にしてくれて、ありがとう。 一緒に作ったインドのフォルダ、小さいけれども、他のフォルダと一緒に大切にしていくよ。 彼女らとの小旅行。 彼女らのインドの旅。 いつの日かまた新規ファイルが増えるといいなーと夢見つつ。 完 〈スペシャル・ダンニャワード〉 旅人の貴女達 ラジヴさん ワドワさん 相方 and You
by tacca531
| 2012-04-23 02:09
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