2013年 02月 17日
ものすごーく久しぶりに実験室に入ることになった。
なぜかというと、暑くなる前に試さなくてはと思っていた事があったから。 話は半年以上前に遡るのだ…(長くなるぞ)。 夏のある日、『お菓子作りプロ級』のご婦人がお土産に持ってきてくれた、 『売ってるのより美味しい級』のシフォンケーキを頬張っていた時のこと。 その人が、まるで智恵子抄の一節を読むように言ったのだ。 「デリーには、ほんとのクリームがない」 この街でお菓子を作ったことがある人のほとんどは、 「そうよね」 って思うのではなかろうか。 言い換えると、「ホイップクリームがない」っていう事なのだ。 知っての通り、インドには牛(と水牛)がたくさんいるので、 乳製品はとっても豊富。 牛乳がなかったら一日たりとも生きていけないような人がいっぱいいる。 にもかかわらず、首都デリーではホイップできるクリームがなかなか入手できない。 実はいわゆる「生クリーム」は街の牛乳屋さんから計り売りで買うことができる。 でも残念ながら、それは基本的に加熱用だと思ってよく、 生で食べるのはあくまでも自己責任。 どこのお店でも売っているのは、テトラパックに入った低脂肪のクリームだ。 常温で保存ができて便利だし、ちゃんと殺菌処理されてるんだけれど、 肝心のホイップに使おうとすると、なかなか泡立たない。 脂肪分が少なすぎるのだ。 国産がダメだというなら輸入品という手がモチロンあるけれども、 高級スーパーに行かなきゃ売ってないし、 何より海をわたって来てるだけあって、かなり立派なお値段だ。 お菓子作りプロ級の智恵子(仮)はこの日、 輸入品のスプレー式ホイップをケーキと一緒に持ってきていて、 各自のお皿にシュシュ~!っとクリームをサーブしてくれた。 スプレーは便利だけど、やっぱり風味は劣るわーと言いながら。 「ケーキ屋さんのクリームも生クリームじゃないもんね」 と智恵子(仮)がいふのだ。 確かに、こっちのケーキ屋さん(高級店は別として)のクリームって、 ちょっと独特なのだ。 ちゃんとホイップされてて、きれいにデコレーションしてあるけど、 生ぬるくて口溶けが悪い。 「あれって、バタークリームですかね?」 と訊くと、智恵子(仮)は 「それとは別だね。バタークリームでもないと思う」 と言う。 ちょっと気になったので、後でネットで調べてみたら、 何年か前のこんな記事を見つけた。(英語です) 'Not the creamy layer' これによると、インドのケーキによく使われてるホイップクリームは乳製品ではなく、 大豆原料のまったく別物、ということなのだった。 大豆! おお、それは知らなかったぞ〜。 なんでも冷凍で長期間保存ができ、安価で、 暑い時期でもサッと泡立てることができるらしい。 まあ原料が大豆で変な薬品じゃないわけだから、 もしかしたら逆にヘルシーなのかもしれないんだけど、 牛の都で食べられてるケーキが乳製品じゃないなんてねえ…。 しかし、世の中には同じようなことで悩んでる人が結構いるものなんだな。 「低脂肪クリームを泡立てる方法」 を、研究してる人たちがやっぱり世界中に大勢いらっしゃる。 で、調べたら単純かつ合理的な方法が紹介されてたので、 レッツトライじゃ。 【材料】 低脂肪クリーム(Amulのfresh creamを使いました)200ml 砂糖 大さじ2 ホワイトバター 30g ホワイトバターというのは、日本では見たことがないけど、 真っ白な無塩バターみたいなもの。 インドでは各家庭でよく作られております。 インドの牛乳(高脂肪タイプ)を加熱すると、上にクリームが溜まるので、 それを貯めておき、撹拌して水分と分離させてできるのがホワイトバター。 わたしは市販のものを使いました。 【作り方】 まず、クリームやボウルは良く冷やしておくこと。 使うクリームを計量してみたら、200mlでピッタリ200gだった。 わたしが使ったクリームは、脂肪分が25%のものなので、 このうち50gが脂肪ということ。 これを40%にするためにはあと30gの脂肪分が必要だ…。 そう、つまり足りない分を溶かしたホワイトバターで補うというわけなのだ。 〈1〉 ホワイトバターを量って、耐熱の器に入れる。 クリーム大さじ2〜3と一緒に、レンジで溶けるまでチン。 よくよく混ぜて、室温に冷ましておく。 〈2〉 残りのクリームに砂糖を加えて、泡立て開始。 六分立てくらいになったら、1のホワイトバターを少しずつ加えながら、 混ぜ続ける。 〈3〉 角が立ったら、出来上がり。 で、実験の結果、しっかり八分立てとまではいかなかったけど、 七分立てくらいにはなったのではないかと…。 (急いでたから、もう少し泡立てたら良かったかも) ホワイトバターを加える前とでは、明らかに硬さが変わったので、 たしかに効果はあるみたいだった。 他にも、レモン汁やジャムを入れたり、 ゼラチンを少し加えるという方法もあるらしいから、 そういうのも試してみたらいいのだろうなあ。 ロールケーキにたっぷり入れたり、お土産用に運んだりするケーキには、 やっぱりもう少ししっかりしたホイップじゃないとね。 日本だと植物性低脂肪のホイップなんかが、 こういう方法でしっかり泡立つらしいよ。 ホイップクリームばかり作っても食べきれませんよ、ということで、 ショートケーキにしてみました。 この手のケーキ作るの、子供の頃のクリスマス以来じゃあるまいか。 不器用なわたしにはデコレーションなんて無理なので、 ひたすらクリームを塗って(いや積んで)イチゴあるだけ乗せて。 クリームは40%の高脂肪になっただけあって、リッチな風味で、 なかなか美味しかった。 やっぱり大豆よりホントのクリームが良いよね。 でも、どうせなら『売ってるのより美味しい級』のスポンジ生地を このクリームで食べたいなあ。 うーん、智恵子(仮)、近くに引っ越して来てくれないかなあ。
by tacca531
| 2013-02-17 19:33
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